エルサレムをイスラエルの首都に-トランプ大統領が正式表明
エルサレムをイスラエルの首都に
アメリカのトランプ大統領が2017年12月6日に、エルサレムをイスラエルの首都として認めることを正式に発表しました。
この正式発表はただの1ニュースには終わらず、非常に大きな意味を持ちます。
エルサレムはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の聖地であり、この場所をイスラエルの地と認めることはアメリカがエルサレムがユダヤ教のものだと認めることと同義になります。
これはアメリカのパレスチナ問題に対する方向性の転換を意味し、今後の中東和平に大きな影響を与えます。少なくともよい方向には進まないと思われます。
ここでは、世界遺産とも関係した話をしていきます。
まずは、背景から確認していきましょう。
パレスチナとイスラエル
パレスチナは2つの地区に分かれており、東をヨルダンと接している「ヨルダン川西岸地区」と、南をエジプト「ガザ地区」に分かれています。ヨルダン川西岸地区とガザ地区は「パレスチナ自治区」とされていますが、世界の国々(国連)からは現在も国として認められておりません。
歴史を古くまでは辿りませんが、イスラエルのあるパレスチナという地域は第一次世界大戦まではオスマン・トルコの支配下にあり、ユダヤ人、アラブ人が宗教は違えど、争いもあまりなく、共生をしていました。
しかし、第一次世界大戦のオスマン・トルコとの戦争時にパレスチナ問題の始まりとなる出来事が起こりました。
その原因はイギリスにありました。
イギリスはオスマン・トルコに勝利するため、いわゆる「三枚舌外交」をするのです。
三枚舌の相手とは、フランス・アラブ・ユダヤに対してです。
フランス - サイクス・ピコ協定(1916年)
フランス、ロシアの間で結ばれた第一次世界大戦後のオスマン帝国領の分割を約した秘密協定。
ユダヤ人 - バルフォア宣言(1917年)
オスマン・トルコとの戦いに協力すれば、パレスチナの地に国家の建設に賛同を表明すると宣言
アラブ人 - フサイン・マクマホン協定(1915年)
オスマン・トルコとの戦いに協力すれば、アラブ国家の独立に協力することを約束
もちろん、これらはすべて成り立つはずもなく、矛盾した外交でありました。
この三枚舌外交により、ユダヤ人、アラブ人は対立することとなります。
無責任な態度を示したものの、収集がつかずこの自体をイギリスは国連に委ねます。
そして、
1947年 パレスチナ分割決議案
が採決され、その後
1948年 イスラエル建国
当然のことながら、ユダヤ人が独断でパレスチナの地域に国を建国したのですから、ヨルダンを始めとするイスラム諸国がイスラエルを侵略しようとします。
これが、中東戦争と言われるものです。
中東戦争は計4度行われ、第一次(1948)、第二次(1956)、第三次(1967)、第四次(1973)と長い間続きました。
ここまで、大きなものになったのは、ユダヤ教とイスラム教という「宗教問題」だけには止まりません。これには、パレスチナ地域の場所も大きく関わってきます。
パレスチナはユーラシア大陸とアフリカ大陸のつなぎ目にあるため、どこの国もここを要所としたいと考えた「領有問題」でもあったのです。中東戦争を経て、パレスチナの勢力図は下記のように変遷し、イスラエルが勢力を拡大させていきました。
その勢力拡大の背景には、今回の問題となっている「アメリカ」が大きく関わっていたのです。
アメリカはなぜイスラエル(ユダヤ人)に肩入れするのか
なぜアメリカはここまでしてパレスチナ問題に対し、イスラエルの味方をするのでしょうか?ただ、ナチスドイツによるホロコーストに同情して、ユダヤ人の国家であるイスラエルの味方をしているだけではありません。
これにはアメリカの政治における深い闇が関係してくるのです。
ユダヤ・ロビー
アメリカの政治家が肝に銘じている、「ある常識」がある。
それは「ユダヤ人を敵に回したら、選挙に勝てない」ということである。
アメリカとイスラエルの深すぎる関係。世界制覇を目前とするユダヤ人たちの暗躍。: 英考塾
そうです。アメリカで政治をするにあたって、ユダヤ人は無視できないのです。
アメリカ合衆国におけるユダヤ人の人口割合は1.7%に過ぎず、528万人にしかいません。しかし、ユダヤ人はよく言われているように世界一賢く、企業経営者や政治家を多く輩出し、また投票率も高いため、反イスラエルの発言をすると、選挙で落選に追いやられるのです。
これらはユダヤ・ロビーと言われ、アメリカの政治家を戦々恐々とさせています。
米国には約530万人のユダヤ系市民がおり、活発な政治活動で知られる。その数は、米国の人口の2%以下に過ぎないが、その組織率と投票率の高さ、大統領選挙の際に重要なニューヨークやイリノイなどの州への人口の集中、マスコミ、大学など言論界での発言力の大きさなどの要因が合わさって、政治的に無視できない力を有している。伝統的にユダヤ人の大半が民主党支持で、民主党の大統領には特にユダヤ人の影響力が強い。しかし、近年になって共和党支持のユダヤ人も増えてきた。その諸組織は、ユダヤ・ロビーとして知られている。ユダヤ・ロビーは、その力をイスラエルのために行使してきた。
トランプ家とユダヤ教
そして、さらにトランプ家はユダヤ教とさらに関係が深いのです。
トランプ家の宗教は、イギリス起源のプロテスタントであるが、娘のイヴァンカは娘婿となるクシュナーとの結婚する際、プロテスタントから正統派ユダヤ教に改宗しました。
このこともトランプ大統領がユダヤ人と贔屓にする要因となりえるのでしょうか。
日本の基本姿勢
我が国は,イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する二国家解決を支持している。我が国は,イスラエル及びパレスチナ自治政府双方に対して,二国家解決を可能な限り早期に実現するため,互いの信頼関係の構築に努め,交渉再開に資さない一方的行為を最大限自制し,直接交渉の前進を図るべく一層努力するよう呼びかけている。
日本は外務省が上記のような基本姿勢を表明しており、イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が共存共栄する二国家解決を支持する立場にある。
もともとアメリカもこの姿勢ではあるが、トランプ大統領の今回の表明は、パレスチナの独立を無視したイスラエル側にたった態度であり、二国家共存の立場とは異なるものである。
日本が今回のトランプ大統領の発言に対し、どのような態度をとるかは非常に興味深いものであるが、従来の立場を変えず、中立的に共存共栄の実現に向けて、協力する体制を誇示してもらいたいと考えます。
イスラエル/パレスチナとユネスコ(UNESCO)
今回の発言より前にもアメリカはイスラエルとともにユネスコを脱退する表明をしています。
例えば
アメリカはユネスコが「反イスラエル的態度で政治的に中立ではない」という理由から2018年12月31日にユネスコを脱退するとしています。
アメリカは以前にも2011年にユネスコがパレスチナを正式に加盟したときにユネスコ分担金の拠出を停止したことがあります。これはユネスコがパレスチナを実質的に国家として認めたという意味だからです。
パレスチナは暫定自治は認められていますが、依然国連からは国家としては認められておりません。パレスチナはそれを実効的に国家と認めさせるようにユネスコなど国連の関連機関からこのような動きをしているのです。
パレスチナにある世界遺産
パレスチナは国際連合では正式な加盟国になれていませんが、ユネスコに2011年10月31日に、総会で可決され(賛成107か国、反対14か国、棄権52か国)正式な加盟国として承認されました。その後、世界遺産条約を2011年12月8日に批准しました。
2017年12月7日現在、パレスチナには3件の世界遺産があります。
今回は、その1件を紹介します。
イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路
イエス生誕の地 : ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路|パレスチナ 文化遺産|世界遺産オンラインガイド
国名:パレスチナ自治政府
分類:文化遺産(危機遺産)
登録年:2012年登録
登録基準:(iv)(vi)
世界最古の石造教会、ベツレヘム生誕教会
前述の2011年世界遺産条約批准後すぐに登録された世界遺産。
また、イスラエル・パレスチナ問題により教会の維持、修復が進まないことから世界遺産登録と同時に危機遺産に登録された。
ベツレヘムはエルサレムより南に10kmほど行ったところに位置する。
ベツレヘムの生誕教会はイエス・キリストが生誕した場所として建てられ、その入り口付近にはかの有名な馬小屋として使われた洞窟も存在する。この初期キリスト教会の特徴を残す聖誕教会に加え、この巡礼の最終目的地に向かうための巡礼路と鐘楼、ひな壇式庭園、ラテン・ギリシア正教・フランシスコ会・アルメニア教会の女子修道院や教会群なども指定対象である。
今回のトランプ大統領の発言は物議を醸しだしており、この発言に賛同する国、非難する国が出てくると思います。
確かに中東和平はここのところ大きな進展は見られませんでした。そういう意味では大きく動き出そうとするターニングポイントなのかもしれません。
しかし、良い方向に進むとは思えず、トランプ大統領、ひいてはアメリカ合衆国はどのような思惑があって、今回の表明をしたのでしょうか。純粋に中東情勢をよくするために行ったとは思えません。やはり、政治的なことが絡むように思えてなりません。
【2017年11月後半】世界遺産ニュース
【2017年11月後半】世界遺産ニュース
いよいよ明日から12月ですね。
2017年11月後半(11月16日~30日)までのニュースをまとめています。
今回は、驚きの世界遺産ニュースはありませんが、役立つ情報も交えて、紹介していきます。年明けまでは次の世界遺産委員会に関する新たな動きはでてこないでしょうか。
今回も3件ピックアップしていきます。
※リンク切れなどが発生している場合もありますが、予めご了承ください。
中国がユネスコ世界遺産委員会の委員国に
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は14日、フランス・パリの本部で第21回世界遺産条約締約国総会を開催し、投票で128票を獲得した中国が世界遺産委員会の委員国となった。任期は4年。新華社が伝えた。
中国のほか、オーストラリア、バーレーン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブラジルなど11カ国も選出され、委員国は計21カ国となった。
(中略)
中国は1985年に締約国となって以降、世界遺産委員会の委員国を3期務めてきた。現在、中国には世界遺産が52カ所あり、その数はイタリアの53カ所に次いで世界2番目の多さとなっている。
中国がユネスコ世界遺産委員会の委員国に―中国メディア - エキサイトニュース
改めて復習ですが、
世界遺産委員会の委員国は世界遺産条約締約国のうち、世界遺産条約締約国総会で選出された21カ国から構成されます。
また、委員国はバランスが考慮され、最低でも下記の選出枠があります。
- グループI (西ヨーロッパ・北アメリカ) - 2か国
- グループII (東ヨーロッパ) - 2か国
- グループIII (ラテンアメリカ・カリブ海) - 2か国
- グループIV (アジア・太平洋) - 3か国
- グループV(a) (アフリカ) - 4か国
- グループV(b) (アラブ諸国) - 2か国
wikipediaより引用
中国はイタリアに次いで2番目に世界遺産が多い国ですので、発言力も大きいと思います。来年以降どういった対応を見せてくるでしょうか。
陵墓に眠るのは誰なのか 宮内庁と学者の見立てに相違
大阪府の百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群が世界文化遺産の国内候補になったことで、「仁徳天皇陵」や「応神天皇陵」などの陵墓が注目されている。だが、宮内庁が被葬者としている天皇や皇族には、学術的には疑問も少なくない。
陵墓とは、歴代の天皇・皇后の墓である「陵」と、皇族が葬られた「墓」の総称だ。宮内庁のホームページによると、同庁は現在、188の陵と555の墓、46の陵墓参考地(陵墓の候補地)など、計899件を管理している。
(中略)
宮内庁は一般の人の陵墓古墳への立ち入りを禁止している。百舌鳥・古市古墳群が世界遺産候補となった際にも「引き続き皇室の祖先のお墓として、地域と協力をしながら適切な管理を行っていく」としており、登録が実現しても一般公開などは難しそうだ。
陵墓に眠るのは誰なのか 宮内庁と学者の見立てに相違:朝日新聞デジタル
2019年(平成31年)に世界遺産登録を目指すことが先日決まった百舌鳥(もず)・古市古墳群ですが、以前から陵墓に埋葬されている本当の天皇と通称名で名の通った天皇陵が違うのではないかという議論が続いています。
今までは、それでもよかったのかもしれませんが、世界文化遺産の登録を目指すのであれば、その議論を明確にしなければ、顕著な普遍性(OUV)を示すのが難しいのではないかと考えられます。
特にここでも言及されている誰もが習ったであろう大阪府・堺市にある日本最大の前方後円墳「仁徳天皇陵古墳」は本当に祀られているのは仁徳天皇なのかということが専門家の間でも話題になっています。
詳しいことは専門家に譲りますが、埴輪の変遷からひも解くと時代が逆になっていることなどが議論になっています。
今後の動向が注目されますね。
雑穀街道:山梨・丹波山-相模原 世界遺産目指し取り組み
伝統的な山間地農業の雑穀栽培を広く普及させようと、相模原市緑区の藤野地区と、隣接する山梨県上野原市、小菅村、丹波山村の有志らが、藤野地区と丹波山村を結ぶルートを「雑穀街道」と位置づけ、山地農耕の文化風土や栽培・加工・調理技術の継承に取り組んでいる。持続可能な農業の実践地域として、行政の後押しを受けて、国連食糧農業機関(FAO)世界農業遺産の認定を目指す。
雑穀街道:山梨・丹波山-相模原 世界遺産目指し取り組み - 毎日新聞
タイトルだけ見ると誤解を与えますが、こちらは世界農業遺産を目指すというもの。
世界遺産とは似て非なるものです。
こちらは国連教育科学文化機関(UNESCO)ではなく国連食糧農業機関(FAO)により2002年に開始されたものです。
FAOは食糧危機を見据え農業の大規模化を推進し、緑の革命の考え方をうけ品種改良や肥料を大量に用いることでの生産性・収穫量の向上を是としてきた。その結果、一部の地域では環境破壊や企業参入による農業の工業化と寡占といった問題が生じてしまった。その反省を踏まえ、農業の原点を再確認し、農業就労者の減少と高齢化という問題も交えて考えていこうという取り組みが農業遺産の基本的姿勢である
世界農業遺産の認定地域の紹介もついでにしておきます。
2017年11月現在、世界で19ヶ国44地域、日本では8地域が認定されています。
まだまだ始まって間もない制度のため、認定地域の数も少ないですね。そして、日本の認定地域の占める割合が非常に高いのが特徴です。
今後、世界のバランスが課題になると思われます。
では、どんなところが登録されているかを同じく、農林水産省のHPから引用します。
世界農業遺産はまだまだ認知度としては、低いかと思われますが、日本が世界に対してリーダーシップを発揮して、想定される食糧危機に備えて、大きなムーブメントを興してくれることを期待しています。
それでは、また12月前半の世界遺産ニュースを楽しみにしていてください。
【世界遺産】映画「スターウォーズ/新たなる希望」のロケ地となった「ティカル国立公園」
映画「スターウォーズ/新たなる希望」のロケ地となった「ティカル国立公園」
「世界遺産と映画」シリーズのスターウォーズ編です。
2017年12月15日にスターウォーズ/最後のジェダイが公開されることもあり、スターウォーズのロケ地となった世界遺産を特集しています。
今回紹介するのは、第1作目であるエピソード4、新たなる希望からです。
まずは、概要から
新たなる希望-概要
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(スター・ウォーズ エピソードフォー/あたらなるきぼう、原題:Star Wars: Episode IV A New Hope)は、1977年に公開されたアメリカ映画。
アメリカのスペースオペラである『スター・ウォーズ』シリーズにおける実写映画本編の第1作品目で、ルーク・スカイウォーカーを主人公とする旧三部作の第1章『エピソード4』に当たる。
特撮シーンの評価も高かったが、第一次、第二次世界大戦の記録映像を研究して作り上げられた戦闘機の空中戦シーンとその編集、ベン・バートが制作した既成の音源に頼らないユニークな効果音やキャラクターの声をもそれまでに無い新しさを印象付ける一助となり、アカデミー賞を得ている。
1977年公開当時、1978年公開の映画『未知との遭遇』などとともに世界的なSFブームを巻き起こし、それまでマニアックな映画としてしか認識されていなかったSF作品を誰でも楽しめるエンターテインメントへと評価を完全に変えた。アメリカ国内のみでの総合興行収入(インフレーション調整版)は歴代2位(世界歴代興行収入上位の映画一覧参照)。
スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望 - Wikipedia
本作の中で、この遺跡は反乱軍の秘密基地のあるヤヴィン第4衛星として描かれています。作品中の終盤あたりですが、デススターから逃げてきたミレニアムファルコン号がこの遺跡の上空を飛んでいるのが、わずかですが見ることができます。
ここでも、スターウォーズというSF映画でありながら、CGなどの加工がほぼなく(時代的にもですね)、そのままの遺跡が使われています。
それでは、そんなティカル国立公園の世界遺産としての紹介に行きましょう
ティカル国立公園
【一度は行きたい!旅行のプロおすすめ 絶景の世界遺産100】75.ティカル国立公園(グアテマラ・中南米)【動画あり】 | Travelzaurus.com(トラベルザウルスドットコム)
国名:グアテマラ共和国
分類:複合遺産
登録年:1979年登録
登録基準:(i)(iii)(iv)(ix)(x)
マヤ文明最大の遺跡
グアテマラの熱帯雨林地帯にあるティカル国立公園はマヤ文明でも最大の都市遺跡と言われ、マヤ文明の政治、経済中心都市として紀元4世紀から9世紀ごろにかけて繁栄を極めた。この地に人が住み始めたのは紀元前11世紀ごろといわれるが、実際にティカルに集落ができたのは紀元前800年ごろにさかのぼる。紀元前30年ごろからマヤ文明としての特色がみられるようになり、8世紀には全盛期を迎え、宗教、芸術、科学などを独自に発展させ、マヤの中でも他の都市国家と交易が盛んで、3000もの建造物が今もなお現存している。
都市の人口は最大で約6万人にものぼった。
しかし、9世紀ごろになると徐々に衰退を始め、10世紀になるころには文明が途絶えたといわれる。
長い間忘れられた遺跡であったが、1696年に、スペイン人の神父が、密林の中に迷い込み、偶然この遺跡を見つけるも、本格的な調査は1939年まで行われなかった。
ピラミッド型をした神殿を含め、宮殿、球戯場など3000以上の建造物が、熱帯雨林の中に建ち並んでおり、その雰囲気は来たものを圧倒する。
特に有名なティカルの中心的な遺跡は、高さ51mのピラミッド型の「大ジャガーの神殿」で、最上部の神殿入り口にジャガーの彫刻が発見されたことがその名前の由来である。
このように遺跡が注目され、文化遺産としてのイメージが強いが、周辺の熱帯雨林や生態系にも固有の特徴があり、重要な存在として複合遺産として登録されている。
近年、熱帯雨林の伐採などが問題になっており、保護の必要性が叫ばれている。
大ジャガーの神殿
それでは、スターウォーズ本編の場面とティカル国立公園の比較といきましょう。
スターウォーズ/新たなる希望の一場面
ティカル国立公園
完全に一致しましたね。
こうやって見てみると、本当に森の中にポツンポツンと遺跡が建っており、しかも、それが1000年以上前のものということに驚かされます。
アンコールワットもそうですが、鬱蒼とした森の中にポツンと遺跡があるというのは、物語性を感じます。こういった遺跡が映画などに利用される理由がわかる気がしますね。
【世界遺産】映画「スターウォーズ/最後のジェダイ」のロケ地となった島「スケリッグ・マイケル島」
「スターウォーズ/最後のジェダイ」のロケ地となった島「スケリッグ・マイケル島」
「世界遺産と映画」シリーズ、最近はアニメばかり特集していましたが、久しぶりの実写映画です。
それも今年、2017年12月15日公開予定の「スターウォーズ/最後のジェダイ」でロケ地として使われた島。と言っても、前作「フォースの覚醒」で最後のほうにも出ていましたが。。
最後のジェダイの紹介(TOHOシネマズより)
全米興行収入ランキング歴代No.1、日本でも興行収入116億円の大ヒットを記録した 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)。この歴史に名を刻む作品の、その後を描いたシリーズ最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』がついに公開!フォースを覚醒させたレイと、ダース・ベイダーを継ごうとするカイロ・レン。伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの出現は何をもたらすのか?そして、“光”と“闇”の間で揺れ動く二人を待ち受ける“衝撃の運命”とは?知られざる秘密が明かされるとき、誰も観たことのない衝撃の「スター・ウォーズ」が幕を開ける!
今回紹介する世界遺産は、伝説のジェダイであるルーク・スカイウォーカーが隠れていた島として使われています。
スターウォーズというSF映画でもあるので、多くの方はこの島もCGであると思っているみたいですが、実際に存在する場所なのです。
また、この島もちゃんと歴史を知ると非常に興味深い島なので、スターウォーズのロケ地ということでみなさんに知っていただければ幸いです。
では、世界遺産スケリッグ・マイケル島の紹介にいきましょう
スケリッグ・マイケル島の修道院
国名:アイルランド
分類:文化遺産
登録年:1996年登録
登録基準:(iii)(iv)
ヨーロッパに現存する最古の修道院
アイルランドの南西12kmの海上に浮かぶスケリッグ諸島のひとつであるスケリッグ・マイケル島はもとは修道院であり、中世の石積みの遺跡である。
急峻な岩山は標高218mであり、山頂には7世紀ごろにケルト人が建てたとされる修道院があるが12世紀頃に何らかの理由で放棄され、現在は無人島となっている。
かつては、初期キリスト教修道士たちが絶海の孤島で修行をしていた場所と考えられており、修道院のほか石積みの墓地や礼拝堂、島の天然石を積み上げて作られたドーム状の小屋などが保存状態が良いままで残っている。
島の名前の由来はアイルランド語で「天使ミカエルの岩」からきている。
また、島にはニシツノメドリなどの珍しい海鳥が生息し、自然保護区にも指定されている。
ニシツメノメドリ
スケリッグ・マイケル島の場所
それでは、実際のスターウォーズ本編で用いられてシーンも紹介してみましょう。
先ほどの石造りの建物がバックに映っていますね。
動画で見たい方は↓の予告編をご覧ください。
33秒~40秒ぐらいの間にがっつりと映っています。
余談
スケリッグ・マイケル島はアイルランド語で「天使ミカエルの岩」となっていますが、
似た由来の世界遺産があるなぁと気づいたのは私だけでしょうか。
そういえばフランスの世界遺産「モン・サン・ミシェル」は
フランス語で、Mont(モン)=山、Saint(サン)=聖、Michel(ミッシェル)でつまり「聖ミカエルの山」なんでしたよね。こういった一つ一つだけでは気づかないことですが、世界全体を捉えて見てみると、世界遺産は面白い!
【世界遺産】ピクサー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のモデルとなった「カナイマ国立公園」
ピクサー映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のモデルとなった「カナイマ国立公園」
「世界遺産と映画」シリーズ、今回は初の紹介となるピクサー映画「カールじいさんと空飛ぶ家」です。
今回紹介するカナイマ国立公園は劇中にも登場するカールじいさんがどうしても行きたかった場所、伝説の滝パラダイスフォールのモデルとなった場所です。
まずは、映画の紹介から
あらすじ
勇敢な冒険家チャールズ・マンツに憧れる少年カールは1軒の空き家で、同じく冒険好きでマンツに憧れる少女エリーと出会い、意気投合する。成人した二人はやがて結婚し、初めて出会った空き家を新居とした。マンツが消息を絶ったという“伝説の滝”パラダイス・フォールについて語り合い、いつか二人で見に行こうと約束する。二人は夫婦の時間を楽しみ、長い間共に幸せに生きてきたが、度々の出費で中々滝への旅行費用が貯まらない事に加え、子供は授からなかったところを、カールがついに渡航チケットを手に入れた矢先、エリーは病気に倒れ、亡くなってしまう。
最愛の妻を失ったカールは、街の開発計画によって周囲に高層ビルが建設されていく中、妻との思い出が詰まった家を守るため、立ち退きの要求を頑固に拒み続けていた。ところがある日、立ち退きを迫る相手に誤ってケガをさせてしまい、立ち退かざるをえなくなってしまう。そしてこれをきっかけに、妻との約束を果たす事を決心し、10297個もの風船を結びつけた家ごとパラダイスフォールに向けて旅に出る。しかし、飛び立った後で“お年寄りのお手伝いバッジ”を手に入れて自然探検隊員としてのランクアップを目指している少年・ラッセルが家に入り込んでいた事に気付く。
“お年寄りのお手伝いバッジ”入手に必要な書類へのカールの署名をしつこく求めるラッセルの助けもあってパラダイス・フォールのある土地にたどり着いた二人だったが、着地したのは滝から離れた場所だった。ラッセルの提案で家が浮くことが出来る限界の3日後までに滝まで移動しようと家をロープで引っ張って移動している最中、ラッセルが巨大な怪鳥・ケヴィン、そしてケヴィンを追っていた犬・ダグと遭遇し「ペットにしたい」とカールに懇願。成り行きで二匹も同行する事になった。
カール爺さんがどうしても見たかった景色は現実の世界でも世界遺産になるほど美しい場所だったのです。
では、その「カナイマ国立公園」の紹介といきましょう
カナイマ国立公園
http://travelzaurus.com/heritage_canaima/
国名:ベネズエラ・ボリバル共和国
分類:自然遺産
登録年:1994年登録
登録基準:(vii)(viii)(ix)(x)
巨大な大地がそびえ立つ神秘の樹海
ベネズエラとブラジルの国境沿いに広がるギアナ高地の一角を占めており、総面積約3万km²の国立公園。
世界最古の巨大なテーブル状の山であるテーブルマウンテンと熱帯雨林、草原地帯からなる山地で、未だ人類未踏の場所が数多く存在する。
なぜこのような形になったかについては地盤の影響が大きい。
長年風雨にさらされてきたこの地は地盤の軟らかい部分が削られ、固い地盤だけだ残ったためこのような形となった。
この国立公園でも特に有名なのが、カールじいさん~でも登場する場所であります。
その場所とは落差979mにも及ぶ世界最長の滝「アンヘルの滝」です。
このアンヘルの滝は発見者であるアメリカの冒険家ジミー・エンジェルの名にちなんで、「エンジェルフォール」とも呼ばれています。
それでは、そのエンジェルフォールの写真を紹介します。
【エンジェルフォール】南米奥地にある世界一の落差を誇る滝 | モッシュトラベル
この滝が「カールじいさんの空飛ぶ家」のカールじいさんがあこがれていた土地「パラダイスフォール」のモデルとなっていました。
その伝説の滝パラダイスフォールがこちら
世界遺産のエンジェルフォールも幻想的ですが、このパラダイスフォールも幻想的ですね。
ちなみに、日本の世界遺産である「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として登録されている「那智の滝」は落差約133mとされているので、その規模の大きさがわかると思います。
エンジェルフォールを上からみた画像を最後に紹介しておきます。
【世界遺産】ジブリ映画「天空の城ラピュタ」のモデルとなった町「ブレナヴォン」
ジブリ映画「天空の城ラピュタ」のモデルとなった町「ブレナヴォン」
恒例の「世界遺産と映画」シリーズです。
今回はジブリ映画「天空の城ラピュタ」を紹介します。
ラピュタは今回紹介する世界遺産「ブレナヴォン」以外にも他の世界遺産もモデルにされており、また別の機会に紹介します。
まずは、ご存じの方も多いですが、天空の城ラピュタの紹介から
天空の城ラピュタ - 概要
『天空の城ラピュタ』(てんくうのしろラピュタ)は、スタジオジブリ制作の長編アニメーション映画作品。スタジオジブリ初制作作品。監督は宮崎駿。
監督である宮崎の小学校時代に考えていた架空の作品が骨子となっており、原作となる作品が存在しない初のアニメオリジナルの監督作品である。製作は徳間書店。高畑勲の映画『柳川堀割物語』の製作遅延により資金調達に追われた宮崎が、徳間書店の鈴木敏夫に相談したことから企画が立ち上げられ、この映画をきっかけに設立されたスタジオジブリ制作映画の1作品目となった。次第に高年齢向けになっていくアニメに対して、マンガ映画の復活を目標に小学生を対象に古典的な冒険活劇として企画され、それが結果的に大人の鑑賞に耐えうる作品になるというのが宮崎の方針であった。興行こそ数字的には振るわなかったものの、配給した東映による観客満足度調査は97.7%と高く、物語は幅広い年齢層に支持され、ビデオ販売は好調であった。
「ラピュタ」という名称は、スウィフトの『ガリヴァー旅行記』に登場する、空を飛ぶ島にある王国「ラピュタ王国(en:Laputa)」からとったもの。劇中に空飛ぶ島の物語を空想した人物としてスウィフトの名前も出てくるが、名前の借用以外は『ガリヴァー旅行記』との関連はない。19世紀後半、産業革命期のヨーロッパを元にした架空世界での冒険を描く。
今回紹介するのは、劇中でも序盤に登場するシーンから
ブレナヴォンの産業景観
Big Pit National Coal Museum | Museu.MS
国名:英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)
分類:文化遺産
登録年:2000年登録
登録基準:(iii)(iv)
世界的に知られた鉄鉱石と石炭の産地
ブレナヴォンには、1788年に始まった製鉄業で発展し、産業革命時の鉄鉱石、石炭工業の施設や、そこで働く労働者の町が現在も残っている。一時は町の人口が2万人を超えていたが、1900年に製鉄業が終焉を迎え、1980年には炭鉱も閉山された結果、町は衰退し、失業率の高まりと人口の高齢化が進んでいる。現在は人口が6000人あまりとされている。
ブレナヴォンは、場所はウェールズ南東部にあり、ブエノス・ビーコンズ国立公園内のサウス・ウェールズ渓谷の玄関口にある。
観光名所として、ビッグピット国立石炭博物館、ブレナヴォン製鉄所、世界遺産センター、ブレナヴォン保存鉄道などがある。
では、この ブレナヴォンはラピュタのどこのシーンのモデルにされたのでしょうか。
先ほどの風景写真でも気づいた方もいるかもしれませんが、こちらの場所です。
この装置が
シータが空から降りてきたところをパズーが助けるところのシーンに使われました。
後ろに車輪が見えますね。
これは、炭鉱の中のエレベーターを昇降させるのに用いられていた機械だったのです。
パズーの人物設定も炭鉱で働く見習い機械工ということで、当時の18~19世紀の面影を再現されたのではないでしょうか。
日本でも富岡製糸場など産業遺産は残されていますが、昔の人々がどのように生き、どのように働いたのかということを感じることができる遺産というのは非常に貴重だと思います。
こういった世界遺産はぜひとも後世に伝えていきたいものですね。
世界遺産って何件あるの?自然遺産の数は?文化遺産の数は?
2017.11.20更新
世界遺産って何件あるの?
世界遺産の数を知っている方はどれくらいいるでしょうか?
毎年、件数が増えていくので把握している人は非常に少ないですよね。
そして、富士山は自然遺産ではなくて文化遺産で登録されたんだよね?
自然遺産と文化遺産の割合ってどれくらい?半々ぐらい?
と、世界遺産について疑問を持たれる方も多いと思います。
今回は、個々に世界遺産を見るのではなく、大局的に世界遺産の件数についてまとめます。
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